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2026.07.31生成AI・データ活用
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AIエージェントの活躍する領域と業種別ユースケース

AIエージェントの活躍する領域と業種別ユースケース

前回の記事では、「AIエージェントとは何か?」について解説しました。AIエージェントとは「仕事を任せられる代行者」であり、目的を渡すことで自律的に判断しながらタスクをこなしていきます。人間とは異なり、疲労などにより「劣化しない」ことでアウトプットの精度が落ちることはありません。

本記事では、以下の2点を明確にすることでAIエージェントの向いている領域を整理します。実際の業務にAIエージェントを組み入れるイメージをつけ、「どの業務なら使えそうか?」を考える一助になれば幸いです。

  • AIエージェントが活躍できる業務領域の特徴
  • AIエージェントの得意・不得意を見分ける判断軸

加えて、実際の業種における活用例を20個提示します。「どんな業務ならAIエージェントが活躍できるのか?」というイメージを膨らませてみてください。

AIエージェントが活躍する条件とは?

技術進歩によりAIエージェントの活用範囲は急速に広がっていますが、活躍できる業務領域とそうでないものがあります。活躍する領域は「目的・前提が明確に定義されている領域」です。例えば、お問い合わせ対応・タスクの管理・異常検知などが代表例として挙げられます。あなたの職場にも、「これ、AIエージェントに任せられるのでは?」と思う業務はありませんか?

その判断のヒントとなるのが、AIエージェントが活躍する領域の特徴です。

AIエージェントが活躍する領域

AIエージェントの発展は凄まじく、テキストや数値で扱えるタスクであれば大半は処理することが可能です。Webサイト作成・プログラミングなどのテキストだけで完結するタスクだけではなく、スライド作成、・スケッチ作成・CAD操作などの視覚的操作が必要なデザインのタスク、購買データ分析・交通量予測などの判断や判定のタスクなど様々なエージェントが社会実装されています。

その中でも、AIエージェントが活躍しやすい領域とそうでない領域には、明確な違いがあります。

観点活躍しやすい領域活躍しにくい領域
ゴール明確なゴールが設定されている曖昧で、想定より大きくずれる
目的変化しにくい時と場合によって変化する
業務プロセス言語化されている言語化されていない/しにくい

ゴールが明確であれば、AIエージェントは高い精度のアウトプットが可能です。チャットAIでも「〜というフォーマットに当てはめてください」と指定したことは多いのではないでしょうか。目的が変化しにくければ判断軸がブレにくくなり、業務プロセスが言語化されていれば「思っていた処理方法と違う」という事象を防ぐことができます。

逆にゴールが曖昧で状況が最初と大きく異なる領域では、想定していたアウトプットの質を保つことが難しくなります。このような領域には、自律度分類でのLevel 0〜2に該当するAIエージェントを用いることが適切です。

活躍するかどうかは「AIエージェントに処理能力があるか」ではなく、「何をすべきかを人間が明確に設計・デザインしているか」が関わっています。何をすべきかが明確であれば、タスクが複雑で難易度が高くとも確実に遂行することができます。

タスクはいくつかのサブタスクに分解することができます。人間が単一のタスクに分割し、目的を明確に設計すると、AIエージェントは質の高いアウトプットを出すようになります。

図1 AIエージェントの自律度による6分類

業務領域の判断軸

これらを踏まえて、AIエージェントを業務に適用する際の判断軸を整理します。

  • そのタスクの目的を一言で説明できるか?
  • そのタスクの理想状態は大きく変化しないか?
  • そのタスクの前提条件は大きく変化しないか?

これは単一のAIエージェントに限らず、複数のエージェントが協調して動く場合も同じ基準が当てはまります。以下の文章の空白を補足できるかを確認して、タスクの解像度を上げてみてください。

  • 「 」という領域で「 」を達成する。理想状態は「 」であり、必要となる情報は「 」である。

業種別ユースケース

ここまで、AIエージェントが活躍する条件と、その判断軸を見てきました。ここからは、実際の業務に当てはめるとどう見えるのか、「金融業」「製造業」「小売業」「運輸・情報通信業」「電気・ガス業」の5業種を例に見ていきます。それぞれの業種で代表的な業務プロセスを取り上げ、フローを整理しながら、AIエージェントがどこに関わり、業務がどう変わるのかを具体的にイメージできるように紹介します。

以下に示すユースケースはあくまで一般的な一例であり、「自社なら何が該当するか?」を検討する比較対象であることに留意が必要です。

金融業

金融業では、「融資審査」「取引モニタリング」という2つの業務フローにおいて、AIエージェントを組み入れる例を取り上げます。

業務フローA:融資審査

図2 金融業における融資審査のフロー

顧客選定から契約・実行に至る一連の流れは、顧客選定・仮説構築→条件設計→融資提案→提案レビュー・応諾→稟議書作成→稟議・決済実行、という順序で進みます。目的は、顧客の資金ニーズに適したスキームを設計し、行内の意思決定を経て融資を実行することにあります。

このうち顧客選定・仮説構築は、目的や前提が案件ごとに変動しやすく対話を通じた柔軟な検討が必要となるため、AIエージェントではなく対話型AIを用いた人間主導の工程として位置づけます。

また融資提案・提案レビュー・応諾・稟議・決済実行は、既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、条件設計と稟議書作成の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 顧客の状況に適したスキーム(金額・期間・担保・金利など)を設計し、提案書や稟議書としてまとめる工程に人手と時間がかかりやすい
  • 提案から稟議・決裁に至るまでのリードタイムが長くなりやすい

企画負荷が高い工程に対して2つのAIエージェントが活躍します。

  1. 融資提案エージェント
    • このエージェントのゴールは、案件組成という難易度の高い工程の初動を早め、決裁者・上長によるレビューに進める状態を早期に作ることです。そのために、ヒアリングを通じて把握した顧客の財務・属性情報や資金ニーズをもとに、金額・期間・担保・金利といった条件要素を組み合わせ、顧客情報に適したスキームを設計し、提案書のドラフトを作成します。
    • 条件要素の組み合わせ方や顧客情報との紐付け方はあらかじめ整理されているため、担当者の経験差に左右されず、初動の速さを確保することができます。
  2. 稟議書作成支援エージェント
    • このエージェントのゴールは、稟議判断に必要な情報を人手で集約・整理する手間を減らし、審査担当者・決裁者が判断そのものに集中できるようにすることです。そのために、顧客が応諾した提案内容と関連情報を、返済能力や担保状況など稟議で重視される観点ごとに整理し、スコアと実態の乖離など注意すべき点があれば明示しつつ、稟議書のドラフトとしてまとめます。
    • 稟議で重視すべき観点や整理の型はあらかじめ決まっているため、担当者ごとのまとめ方の差を抑えながら一定の品質でドラフトを用意することができます。

これにより、提案書と稟議書という起案負荷の高い工程の初動が早まることで、提案から決裁までのリードタイムが短縮され、担当者はスキームの妥当性判断や顧客対応そのものに集中できるようになります。

業務フローB:取引モニタリング

図3 金融業における取引モニタリングの業務フロー図

取引モニタリングは、マネーロンダリング・テロ資金供与・不正利用を防止するために行う業務です。目的は、異常な取引を早期に検知し、必要に応じて当局へ報告するまでの一連のプロセスを、正確かつ迅速に遂行することにあります。

業務プロセスは、取引監視→異常検知→一次調査→異常対応→報告書作成→当局報告、という流れで進みます。AIエージェントは、図中①②で示す業務に関わります。このうち異常検知は、ルールベースや統計モデルによって機械的に処理される領域であり、AIエージェントが担う工程ではありません。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 異常検知アラート後の一次調査では、関連情報の収集・整理に一定の時間を要する傾向がある
  • 報告書作成においても、規定フォーマットへの型合わせや記載漏れの確認に手間がかかることが少なくない
  • こうした積み重ねが、当局報告までのリードタイムを長期化させる一因となりうる

そこで2つのエージェントが活躍します。

  1. 事実調査エージェント
    • このエージェントのゴールは、一次調査に着手するまでの時間を短縮し、調査担当者が早期に判断へ移れるようにすることです。そのために、アラート対象の取引情報を受け取り、口座・取引先の過去の取引履歴や顧客属性情報を収集した上で、類似の過去アラート事例と照合し、調査担当者向けに整理して提示します。
    • 収集すべき情報の種類や照合の観点は既に定型化されており、担当者ごとの経験差に左右されずとも再現可能な業務であるため、情報収集を都度の手作業から切り離すことができます。
  2. 報告書作成エージェント
    • このエージェントのゴールは、報告書作成における型合わせの手間を減らし、調査担当者が判断・確認作業に専念できるようにすることです。そのために、調査担当者が確認・追記した調査結果を受け取り、規定の報告書フォーマットに沿って再構成した上で、記載漏れ・不整合を確認しつつドラフトとして提示します。
    • 報告書の様式や必要記載項目はあらかじめ規定として言語化されており、再構成という業務プロセス自体が定型化されているため、一定の精度でドラフトを機械的に生成することができます。

この2つのエージェントにより、一次調査の情報収集と報告書ドラフト作成が早期に完了し、調査担当者は判断・確認作業に集中できます。結果として、当局報告までのリードタイムは短縮されます。

製造業

製造業では「生産計画〜出荷」「設備の稼働監視〜保全記録作成」の業務フローに沿ってAIエージェントが関わるケースを紹介します。

業務フローA:生産計画〜出荷

図4 製造業での生産計画から出荷までの業務フロー図

生産計画から出荷に至る一連の流れは、需要予測→生産計画→資材調達→製造→品質検査→出荷、という順序で進みます。目的は、需要に見合った量を過不足なく生産し、品質を担保した状態で市場に届けることにあります。このうち資材調達・製造・出荷は、既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、生産計画と品質検査の2箇所(図中①②)の業務に適しています。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 需要変動が生じた際の計画見直しは担当者の経験や手作業に依存する部分が大きく、対応が後手に回りやすい傾向がある
  • 品質検査は目視中心であるため、検査員のスキルや疲労によって判定にばらつきが出る可能性がある

そこで2つのエージェントが活躍します。

  1. 計画立案エージェント
    • このエージェントのゴールは、需要変動が生じた際に、納期遅延や在庫過多といったリスクを抑えた形で生産計画を早期に立て直すことです。そのために、需要実績と生産計画上の見込み数量を突き合わせて乖離を捉え、実行可能なリスケジュール案を複数パターン作成した上で、それぞれのトレードオフを添えて計画担当者に提示します。
    • 計画見直しの判断基準やリスケジュールの手順自体は既に言語化・定型化されており、担当者の勘や経験に依存せずとも再現可能な業務であるため、変化の初動をエージェントに委ねることで対応の遅れを防ぐことができます。
  2. 不良判定エージェント
    • このエージェントのゴールは、判定基準を一定に保ちながら、検査員の負担をグレーゾーンの見極めに集中させることです。そのために、検査データを品目ごとの合格基準と突き合わせ、基準内・基準外・判定境界(グレーゾーン)に振り分け、基準外は不良として処理し、グレーゾーンのみを検査担当者へエスカレーションします。
    • 合格基準そのものは品目ごとに明確に定義されており、判定という業務プロセス自体が言語化・構造化されているため、目視によるばらつきを介さずに一定の精度で機械的に処理することができます。

これらのエージェントにより、需要変動への対応は早期の案として上がってくるようになり後手対応が減るとともに、検査員は判定に迷う部分の見極めに集中できるようになります。

業務フローB:設備稼働監視〜記録

図5 製造業における稼働監視から記録までの業務フロー図

稼働監視から記録に至る一連の流れは、稼働監視→異常検知→保全計画立案→部品手配→保全実施→保全記録作成、という順序で進みます。目的は、設備の異常を早期に捉え、計画外の停止を防ぎながら安定的に稼働させ続けることにあります。このうち保全計画立案・部品手配・保全実施は、異常検知後の対応として既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、異常検知と保全記録作成の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 異常の予兆は人の定期巡回や経験則に頼って察知される部分が大きく、発見が遅れると突発停止につながりやすい
  • 点検・修理記録が紙や個人のメモに散在しがちで、次の保全計画に十分活かしきれていないことも少なくない

これらの課題を解決するために2つのエージェントが活躍します。

  1. 異常検知エージェント
    • このエージェントのゴールは、異常の察知を巡回や経験則に依存させず、予兆の段階で対応に動けるようにすることです。そのために、振動・温度・稼働音などのセンサーデータを継続的に収集し、設備ごとの正常稼働時の傾向と比較して逸脱パターンを検知した上で、逸脱の種類と深刻度を分類し保全担当者へアラートを発報します。
    • 監視対象の指標や正常範囲の基準はあらかじめ定義・構造化されており、逸脱の判定という業務プロセス自体が言語化されているため、人の感覚に頼らず継続的かつ一定の精度で監視を行うことができます。
  2. レポートエージェント
    • このエージェントのゴールは、散在しがちな点検・修理記録を集約し、保全計画の精度を高める材料として活用できるようにすることです。そのために、現場担当者が入力した点検結果・修理内容・使用部品などの記録を設備単位・期間単位で集約し、故障頻度や修理傾向といった次の保全計画に活かせる示唆をまとめた上でレポートを作成します。
    • 記録すべき項目や集約の単位はあらかじめ定型化されており、集約・要約という業務プロセス自体が構造化されているため、散在した情報を機械的に整理し一定の品質で提示することができます。

これにより、予兆の段階でアラートが上がるようになります。計画外停止を抑えた計画的な保全がしやすくなるとともに、故障傾向を踏まえた保全計画の精度が向上します。

小売業

小売業では「発注〜在庫管理」「顧客対応」の2つのフローに沿ってAIエージェントとの協働イメージを紹介します。

業務フローA:発注〜在庫管理

図6 小売業における発注から在庫管理の業務フロー図

需要予測から在庫管理に至る一連の流れは、需要予測→発注→入荷検品→棚卸・陳列→販売→在庫確認、という順序で進み、在庫確認の結果は次の発注へとつながっていきます。目的は、欠品や過剰在庫を防ぎながら、店舗の商品供給を安定的に保つことにあります。このうち入荷検品・棚卸・陳列・販売は、既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、発注と在庫確認の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 発注量の判断は店舗担当者の経験や勘に依存する部分が大きく、欠品や過剰在庫につながりやすい
  • 多店舗展開の場合、担当者ごとに判断のばらつきが生まれやすいことも少なくない

このような担当者ごとのばらつきをなくすためにAIエージェントが活躍します。

  1. 発注提案エージェント
    • このエージェントのゴールは、発注量の判断を個人の経験や勘に委ねず、データに基づく初期案を用意することです。そのために、店舗ごとの販売実績・在庫残数・季節性を集計して需要予測を行い、必要在庫水準との差分から発注候補量を算出した上で、仕入先の制約を反映しつつ発注担当者に根拠とともに発注案を提示します。
    • 需要予測の算出方法や必要在庫水準の考え方はあらかじめ定義・言語化されており、発注候補量の算出という業務プロセス自体が定型化されているため、担当者ごとの経験差に左右されずとも一定の精度で初期案を用意することができます。
  2. 欠品検知エージェント
    • このエージェントのゴールは、欠品の兆しを人の気づきに頼らず早期に捉え、補充判断につなげることです。そのために、店舗の棚卸データ・POSデータを継続的に監視し、品目ごとの安全在庫水準と現在庫を比較した上で、下回る、または下回る見込みの品目について緊急度とともに補充依頼を起票します。
    • 安全在庫水準の基準や比較の方法は社内の基準に基づいて定量化しておきます。在庫水準の監視というプロセスは判断基準などが言語化されており、店舗や担当者による差を生じさせずに一定の精度で欠品の兆しを検知することができます。

これにより、発注量の初期案がデータに基づいて提示されることで欠品・過剰在庫のリスクが減ります。特に多種類の商品を取り扱う場合に効果が高く、担当者は例外対応や最終確認に集中できるようになります。

業務フローB:顧客対応

図7 小売業における顧客対応の業務フロー図

問い合わせ受付から対応記録に至る一連の流れは、問い合わせ→一次対応→エスカレーション→担当への引き継ぎ→対応→対応記録、という順序で進みます。目的は、問い合わせ内容に応じて適切な対応を行いながら、対応の速さと質を両立させることにあります。このうち対応・対応記録は、既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、一次対応と担当への引き継ぎの2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 定型的な問い合わせにも都度人手で対応しており、対応に時間がかかりやすい
    • 繁忙期には対応漏れや待ち時間が発生することも少なくない
  • エスカレーション時も、経緯の共有に一定の時間がかかる傾向がある

迅速な対応を可能にするため、2つのAIエージェントが活躍します。

  1. 初期対応エージェント
    • このエージェントのゴールは、定型対応にかかる人手と時間を減らし、担当者を個別対応が必要な案件に振り向けることです。そのために、問い合わせ内容を受け取って要件を分類し、過去のFAQ・規定文書と照合した上で、定型的な範囲で回答可能な場合はその場で回答し、個別事情の判断が必要な場合は人間の担当者に引き継ぎます。
    • 想定される問い合わせのパターンや回答内容はFAQ・規定文書としてあらかじめ言語化されており、分類・照合という業務プロセス自体が定型化されているため、担当者を介さずとも一定の精度で一次対応を行うことができます。
  2. 引き継ぎエージェント
    • このエージェントのゴールは、担当者がゼロから経緯を追う手間をなくし、対応開始までの時間を短縮することです。そのために、これまでのやり取りや未解決の論点を整理し、顧客の感情面のトーンも含めて要約した上で、注文番号や購入履歴などの関連情報を紐付けて担当者への引き継ぎメモとして提示します。
    • 引き継ぎに必要な情報の種類や要約すべき観点は先に整理しておきます。経緯の整理・要約という業務プロセス自体が構造化されているため、担当者ごとの経験差に左右されずとも一定の品質で引き継ぎメモを用意することができます。

これにより、定型対応が自動化されることで担当者は個別対応が必要な案件に集中できるようになり、エスカレーション時も要約された経緯が渡されるため対応開始までの時間が短縮されます。

運輸・情報通信業

運輸・情報通信業では、「設備保全(CBM)」「通信障害対応」という業務フローを扱います。

フローA:電車・バス設備保全(CBM)

図8 運輸業における設備保全(CBM)の業務フロー図

状態データ収集から効果検証に至る一連の流れは、データ収集→予兆検知・劣化診断→整備計画への反映→整備実施→記録・効果検証、という順序で進みます。目的は、設備の劣化や故障の兆しを早期に捉え、計画外の運休・遅延を防ぎながら整備を進めることにあります。このうち予兆検知・劣化診断はルールベースや統計モデルによって機械的に処理される領域であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、整備計画への反映と記録・効果検証の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 整備計画の立案は担当者の経験に依存する部分が大きく、運行スケジュールとの調整に時間がかかりやすい
  • 部品・人員の不足に気づくのが遅れ、整備が先送りになることも少なくない

細かい間違いを訂正するために2つのAIエージェントが活躍します。

  1. 計画立案エージェント
    • このエージェントのゴールは、整備計画の立案を担当者の経験と手作業に委ねず、運行制約と整備の必要性を踏まえた案を早期に用意することです。そのために、予兆検知・劣化診断の結果を受け取り、運行スケジュールと照らし合わせて整備に充てられる時間枠を洗い出した上で、深刻度と時間枠から優先順位・タイミング案を組み立て、必要な部品・人員の不足があれば整備担当者に提示します。
    • 診断結果の深刻度の扱いや運行制約との照合方法はあらかじめ定型化することを想定しています。優先順位付けという業務プロセス自体が構造化されていることにより、担当者の経験に頼らずとも一定の精度で計画案を用意することができます。
  2. レポート作成エージェント
    • このエージェントのゴールは、現場に散在しがちな記録を蓄積・活用可能な形にし、次の診断・計画の精度を高めることです。そのために、現場で入力された整備内容・交換部品・作業時間などの記録を車両・部位ごとに時系列で整理し、想定より早く劣化が進んだ箇所など次回の診断・計画で注意すべき傾向を洗い出した上でレポートとしてまとめます。
    • 記録すべき項目や整理の単位はあらかじめ整理しておきます。傾向の洗い出し・整理という業務プロセス自体が構造化されているため、現場ごとの記録の散らばりを機械的に整理し一定の品質で提示することができます。

これにより、診断結果を踏まえた整備計画案が早期に提示され必要資源の不足も事前に分かるようになることで、計画外の運休・遅延リスクが減ります。

業務フローB:通信障害対応

図9 情報通信業における通信障害対応の業務フロー図

異常検知から再発防止分析に至る一連の流れは、異常検知→一次切り分け→復旧計画立案→復旧対応→顧客通知→再発防止分析、という順序で進みます。目的は、通信障害の影響を最小限に抑えながら早期に復旧し、同種の障害を繰り返さない体制につなげることにあります。このうち異常検知はルールベースや統計モデルによって機械的に処理される領域であり、AIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、一次切り分けと再発防止分析の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 障害発生時の原因切り分けに時間がかかり、復旧までの初動が遅れやすい傾向がある
  • 障害対応の分析に時間がかかり、事後対応が長引いてしまう

これらの対応時間の削減にAIエージェントは効果的です。

  1. 問題切り分けエージェント
    • このエージェントのゴールは、原因の当たりをつける初動を早め、復旧対応の着手を早めることです。そのために、アラートとともに監視データを収集し、過去の類似障害パターンと照合して原因箇所の候補を絞り込んだ上で、影響範囲を推定し一次切り分け結果を復旧担当者に提示します。
    • 過去の障害パターンと監視データの照合方法はあらかじめ定義されており、原因候補の絞り込みという業務プロセス自体が型として確立されているため、担当者の勘に頼らずとも一定の速度で初動対応にあたることができます。
  2. 障害記録要約・作成エージェント
    • このエージェントのゴールは、蓄積されていなかった過去記録を活用可能な形にし、同種の障害の再発を防ぐことです。そのために、障害発生から復旧までの記録を設備・原因種別ごとに分類・集計し、頻発している原因や対応に時間がかかっている傾向を洗い出した上で、再発防止・体制改善の検討材料としてレポートにまとめます。
    • 記録すべき項目や分類の軸はあらかじめ決まっており、傾向の洗い出し・要約という業務プロセス自体が手順として明確になっているため、記録の分散度合いによらず一定の品質で分析材料を提示することができます。

これにより、一次切り分けが早期に提示されることで復旧対応の初動が早まり、過去記録の傾向分析により再発防止の打ち手が見えやすくなります。

電気・ガス業

電気・ガス業では「需給運用」「保安点検」という2つのフローの中でどのようなエージェントが活躍できるかについての例を挙げます。

業務フローA:需給運用

図8 電気・ガス業における需給運用の業務フロー図

需要予測から記録に至る一連の流れは、需要予測→供給計画へ反映→データ収集→異常対応→供給計画の修正→記録、という順序で進みます。目的は、需要変動に応じて供給を過不足なく調整し、異常時にも適切な対応につなげることにあります。AIエージェントが関わるのは、供給計画への反映と記録の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 需要変動への供給計画の調整は担当者の経験に依存する部分が大きく、判断に時間がかかりやすい
  • 異常対応の優先順位付けも都度の判断になりがちで、対応が後手に回ることもある

属人化を防ぐためにエージェントは活躍します。

  1. 供給計画策定エージェント
    • このエージェントのゴールは、需要変動への計画調整を担当者の経験に委ねず、判断材料を早期に用意することです。そのために、気象データ・過去の需要実績・イベント情報を収集し、直近の需要予測値と既存の供給計画上の見込み値を突合した上で、乖離が大きいタイミング・エリアを特定して調整案を運用担当者に提示します。
    • 需要と供給を突き合わせる観点や調整の考え方はあらかじめ整理されているため、担当者ごとの判断のばらつきを抑えながら早期に調整案を用意することができます。
  2. 対応記録要約・作成エージェント
    • このエージェントのゴールは、都度の判断に依存しがちな振り返りを整理し、次の運用に活かせる形にすることです。そのために、計画の是非・実際の需給状況・異常対応の分析などを受け取り、傾向や要因を整理した上でレポートとしてまとめます。
    • 記録すべき観点はあらかじめ決まっているため、都度の担当者の書き方に左右されず、一定の品質で振り返り材料を提示することができます。

これにより、供給計画の調整案が早期に提示されることで判断のスピードが上がり、異常対応も優先順位が整理された状態で提示されるため重要な対応の見落としが減ります。

業務フローB:保安点検

図9 電気・ガス業における保安点検のフロー図

点検計画立案から記録・報告に至る一連の流れは、点検計画立案→現場点検→異常検知→是正対応→記録・報告、という順序で進みます。目的は、設備のリスクに応じた点検を行い、異常を早期に是正しながら記録を残すことにあります。このうち現場点検・異常検知・是正対応は、既存のオペレーションに沿って実行される工程であり、異常検知自体はルールベースや統計モデルによって機械的に処理される領域であるため、いずれもAIエージェントが担う工程ではありません。AIエージェントが関わるのは、点検計画立案と記録・報告の2箇所(図中①②)です。

このフローには、以下のような課題があると考えられます。

  • 点検計画がリスクを十分に反映せず、一律の頻度・ルートで回っていることが多い
  • リスクの高い設備への対応が手薄になりがちで、点検記録も報告書化に時間がかかることが少なくない

点検計画を迅速に反映するために2つのエージェントが活躍します。

  1. 点検計画策定エージェント
    • このエージェントのゴールは、点検計画を一律の頻度・ルートに頼らせず、リスクに応じた対応の濃淡をつけることです。そのために、設備の設置年数・過去の異常履歴・重要度などのリスク情報を収集し、リスクが高い設備ほど頻度を上げる形で点検頻度案を組み立てた上で、点検員の移動効率も踏まえた順路案とともに点検担当者に提示します。
    • リスクの評価に用いる項目や頻度への反映の考え方はあらかじめ整理されているため、設備ごとの担当者の裁量に頼らず一定の基準で計画案を組み立てることができます。
  2. 報告書作成エージェント
    • このエージェントのゴールは、記録集約・報告書作成にかかる手間を減らし、点検担当者が現場作業に集中できるようにすることです。そのために、現場で入力された点検結果・異常の有無・是正対応内容を設備・エリアごとに時系列で整理し、異常の発生傾向を洗い出した上で報告書としてまとめます。
    • 報告書に記載すべき項目や整理の単位はあらかじめ決まっているため、点検担当者ごとの書き方のばらつきに左右されず、一定の品質で報告書をまとめることができます。

これにより、リスクに応じた点検計画が組まれることで重要度の高い設備への対応が手厚くなり、記録集約・報告書作成の手間が減ることで点検担当者は現場作業に集中できるようになります。

業務におけるAIエージェントとの関わり方

ここまで見てきた業種別の例は、あくまで一般化された姿であり、そのまま自社の業務に当てはまるとは限りません。成果を出せるかどうかは、業務領域の特徴の節で述べた「目的・前提をどれだけ明確に設計できているか」にかかっています。

つまり、「エージェントを導入すれば解決する」のではなく、「導入の前提として、目的・前提を人間側が設計できているか」が問われるということです。そしてこれを判断するには、そもそも自社のどの業務が・どれくらい困っているかが言語化できていなければ、判断のしようがありません。

ここで一つの問いが残ります。自社の業務は、どれだけ言語化できているでしょうか。次の記事では、この問いに答えるための具体的な視点を紹介していきます。

AIエージェントを安全に運用・構築するなら

ここまで見てきたように、AIエージェントの活用は「目的・前提をどれだけ明確に設計できているか」によって成果が大きく左右されます。自社の業務を言語化し、どこにAIエージェントを組み込むべきかを見極めるには、専門的な知見が必要になる場面も少なくありません。

Athena Technologiesでは、「DX Solution」として、ローカル実行基盤・クラウドを問わず、LLM・AIエージェントの構築支援を行っています。自社の業務プロセスに合わせた設計から、安全性を担保した運用体制の構築まで、一貫してサポートします。

AIエージェントの構築を検討されている方は、ぜひAthena Technologiesにお問い合わせください。

Athenaにご興味を持ってくださった方へ