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2026.07.28生成AI・データ活用
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AIエージェントとは何か?チャットボット・RPAとの違いと仕組みをまとめて理解する

AIエージェントとは何か?チャットボット・RPAとの違いと仕組みをまとめて理解する

AIエージェントとは何か

AIエージェントとは、「仕事を任せられるパートナー」です。目的を渡すことで、自律的に判断しながらタスクをこなす性質を持ちます。対話型AI(*1)が「相談相手」だとすれば、AIエージェントは自ら考えて動く「専属秘書」と言えるでしょう。

AIエージェントは「業務効率化」の文脈で言及されることがほとんどです。生成AIの役割である「対話」を超えて「自律的行動」をすること、自然言語による指示が可能で柔軟に行動できること、その結果として従来のツールより広く複雑なタスクを任せられることが大きな特徴です。

では、人間が業務を行う場合と何が違うのでしょうか。人間は肉体的・精神的な疲労を抱え、それが回復するまでには時間がかかります。一方、AIエージェントにはこうした疲労という概念自体が存在しません。

しかしその一方で、AIエージェントには人間にはない別の弱点があります。長時間・長期間にわたるタスクでは、情報が多くなりすぎることで応答の一貫性や精度が低下することが知られています。人間であれば経験や文脈の取捨選択によって自然と回避できるこの問題は、AIエージェントにとって固有の課題だと言えるでしょう。

人間の代行者との違いは、単純な優劣ではなく、抱える弱点の種類が異なる点にあります。人間は疲労という形で劣化し、AIエージェントは情報が多くなりすぎるという形で劣化します。

  • *1 対話型AI:ChatGPTやClaude.aiに代表される「チャット形式でユーザーの指示文(プロンプト)に対して生成AIが回答を生成する」というサービス

従来のツールとの違い

では、同じくタスクを処理する存在として、AIエージェントはRPA(*3)やチャットボットとは何が異なるのでしょうか。

チャットボットとの違い

チャットボットとは、対話型AIのように「チャット形式でユーザーの指示文(プロンプト)に対して回答を生成する」というソフトウェアです。あるシナリオに基づいた対応を設定しておくため、柔軟性は低いという特徴があります。

ユーザーからの見るとチャットボットとAIエージェントはほぼ同じです。しかし、AIエージェントは「自律的に目標達成に向けて行動・計画を遂行する」点がチャットボットと大きく異なります。チャットボットはプロンプトが必要で指示があるまで動作せず、予め用意された情報をもとに回答を生成します。

図1 AIエージェントとチャットボットの違い

AIエージェントは、自律性を持つため指示を待つだけでなく、自身で必要な情報を集めて行動します。AIエージェントの開始条件はプロンプトだけではなくファイルの移動・外部ツールからの入力・日時指定など目的に合わせて設定します。

例えると、チャットボットは「自分の問題を打ち明ける相談相手」、AIエージェントは「目的を与えると自分で考えて行動する専属秘書」と言えます。

Robotic Process Automation: RPA(*3)との違い

Robotic Process Automation: RPAとは、「人が日常的に行う操作手順を記録し、高速に実行する仕組み」(*3)です。マウスクリックやキーボード操作を通して行う、システムへの入力・確認などの手順を記録した手順書をもとにパソコンが自動で操作をするという仕組みです。IT投資でシステム化するほどではない小さなタスクを自動化することを主目的として導入されます。

RPAとAIエージェントは「業務を自動化する」という目的は共通しています。しかし、その動き方は全くの別物です。

図2 AIエージェントとRPAの違い

RPAはあらかじめ記録された手順を忠実に繰り返します。手順通りに動くことが強みである一方、想定外の状況が発生した場合や、手順が定義されていない業務には対応できません。

AIエージェントはこの点が根本的に異なります。手順があらかじめ定義されていなくても、目的に応じてAI自身が判断しながら行動を選択できます。また、「先月の営業データをまとめて」のような曖昧な自然言語の指示にも対応が可能です。

音楽に例えると、RPAは「楽譜通りに正確に弾くピアノ」、AIエージェントは「コード進行を聞いてその場で合わせる即興演奏のミュージシャン」です。どちらが優れているかではなく、「決まった手順を正確にこなしたいか」「状況に応じて柔軟に動いてほしいか」によって使い分けるものです。

  • *2 自然言語:日本語や英語などの人間が使う言語。コンピュータ用のプログラミング言語と区別するために用いられる
  • *3 Robotic Process Automation(RPA):パソコンで行っている定型業務(事務作業など)を自動化するソフトウェアロボット技術[1]。マウス操作やキーボード入力を記録し、高速で実行することができる。

AIエージェントの自律度による分類

ここまで、人間とAIエージェントとでは抱える弱点の質が異なることも確認しました。AIエージェントは「自ら動くパートナー」として捉えることができ、チャットボットやRPAとの違いは「自律して行動できるか?」という点です。行うべき作業が明確な場合は従来のツールの方が向いている場合もあります。この違いを踏まえると、AIエージェントと従来ツールのどちらを選べば良いか、またパートナーとしてどこまで任せられるかは、タスクの性質そのものによって決まってきます。

タスクによって人間が関わる必要があるものとないものがあります。この「人間の介在の度合い」を自律度と呼び、0から5までの6段階に分類することができます[2]。

分類の軸となっているのは、AIが判断や行動を行う範囲について、人間がどの時点で確認するかという関与の頻度とタイミングです。指示のたびに確認するのか、結果をまとめて確認するのか、あるいは例外が発生したときだけ確認するのか。この違いによって、任せられる範囲とリスクの大きさが変わってきます。

図3 AIエージェントの自律度レベル

実際に各レベルへ既存のツールを当てはめてみると、AIエージェントがすでに身近な存在であることがわかります。以下の表では、それぞれのレベルにどのようなタスクが該当し、どのようなツールがそれを担っているのかを整理しました。

レベルタスクの種類(人間の関与のしかた)代表例
Level 5 完全自律型ゴール自体をAIが設定し、対処法も自ら決定する(軍事計画領域)Palantir Gotham(Palantir)
Level 4 高度自律型複数ステップを人間の事前承認なしに自律遂行する(計画立案を伴うコーディングなど)Anthropic Claude Code、Devin、OpenAI Codex、Cursor
Level 3 条件的自律許可された範囲内でAIが自ら判断する(問い合わせ対応可否、データ分析など)Intercom Fin、Salesforce Agentforce、Zendesk AI Agents、Ada
Level 2 監督型複数データを一括処理し、人間がバッチ単位で承認する(文書要約、議事録作成など)Notion AI、Microsoft 365 Copilot、Zoom AI Companion
Level 1 支援型人間が都度指示し、都度確認する(汎用対話、翻訳、症状相談など)OpenAI ChatGPT、Claude.ai、DeepL、ユビー

このように、自律度は「人間がどこまで確認するか」という軸によって分かれています。裏を返せば、目的のタスクにどの程度の自律性を許容できるのか、あるいはどこまでを人間の判断に委ねるべきかは、タスクの性質に応じて見極める必要があるということです。AIエージェントに任せる範囲が大きいほど自律度が高く自動化が進みますが、ブラックボックス化が進みアウトプットの信頼性が落ちるという懸念も大きくなります。

では、AIエージェントは実際にどのような仕組みによって自律的な判断や行動を実現しているのでしょうか。次節では、AIエージェントを構成する層構造に着目し、その動作の内側を見ていきます。

AIエージェントの仕組み

AIエージェントは受け取った目的を達成するために自律的に行動します。しかし、その動作は5つの層に分離された構造の上で成り立っています。どの層が何を担うかを理解することで、AIエージェントを「制御可能な仕組み」として考えることが可能になります。

エージェントの5層構造

AIエージェントの仕組みは以下の5層から構成されます。

  • UI層 ― 人間や外部システムとの情報のやり取りを担う
    • 入出力インターフェースであり、指示の入り口と結果の出口
    • 人間とエージェントの接点。人間でいう目・耳・口
  • オーケストレーション層 ― タスクの判断・計画・結果確認を担う
    • 指揮・調整・判断を行うエージェントの頭脳
    • タスクを分解し、どのツールをいつ使うかを決定する「司令塔」。判断を司る。人間でいう前頭前野
  • ツール層 ― 外部への実際の行動と実行を担う
    • 検索、カレンダー操作、メール送信など、外部システムとの接続。人間でいう手足
    • 実際に行動して外部に対してアクションを行う層
  • モデル層 ― 言葉の理解と生成を担う
    • オーケストレーション層・ツール層に対して言語処理能力を提供する。人間でいう左脳。LLMを基本とする
  • メモリ層 ― 必要な情報の保持と参照を担う
    • 会話履歴・タスク状態・知識ベースを保持する。人間でいう海馬

図3 AIエージェントの層構造とその役割

このセクションでは、以下の点について説明します

  • 各層の役割
  • 各層を実装するために必要な技術
  • 層ごとのつながり

UI層 ― 人間や外部システムとの情報のやり取りを担う

UI層の役割は、エージェントと人間・外部システムの間での情報(データ)のやり取りです。チャットや音声入力、ファイルの読み込みなどを経由してエージェントは動作している環境の情報を入手し、後述するオーケストレーション層に判断の材料として渡します。

人間で例えると、目・耳・口などの五感を司る器官です。UI層自体に判断機構は存在せず、人間による制御(Human In The Loop: HITL)が必要かどうかはオーケストレーション層が判断します。UI層はその確認をユーザーに仲介する窓口として機能します。

主にフロントエンド技術(*4)によって成立します。

オーケストレーション層 ― タスクの判断・計画・結果確認を担う

オーケストレーション層の役割は、以下のフローに沿ってタスクを計画することです。

  1. 与えられた目的を達成するために必要なタスクを判断する
  2. タスクの実行計画を立てる
  3. タスクの結果を確認する

全ての層と横断的に関わり、エージェントの頭脳・司令塔として働きます。UI層から受け取った指示やツール層から得られた情報を元に、どの層をどのように使えば目標を達成できるかを判断します。モデル層からは言語処理能力を提供され、この判断を行います。

人間でいう脳の前頭前野にあたる部分です。判断方法には、LLMによる動的な判断と、あらかじめ決められた条件による判断の2種類があります。

ツール層 ― 外部への行動と実行を担う

ツール層の役割は、AIエージェントが外部環境に対して情報の取得やデータの書き換えを行う能力を提供することです。

主にApplication Programming Interface: API(*5)とModel Context Protocol: MCP(*6)という2つの技術で構成されます。両者は似通った技術ですが、決定的な違いは「AIが自律的にツールの仕様を発見・解釈できるか」という点にあります。APIはデータの入出力の仕様があらかじめ厳密に定義されており、決まった形式でのやり取りが求められます。一方MCPは、AIがツールの仕様そのものを自律的に発見・解釈できるよう設計されており、エージェントが使えるツールをより柔軟に、動的に認識できます。

他の層との関わりは多く、オーケストレーション層から渡されたタスクの実行計画を仕組みに沿った形式に変換して実行します。モデル層からはLLMを提供され、ツールの実行を行います。

モデル層 ― 言葉の理解と生成を担う

モデル層の役割は、AIエージェントが持つ言語処理能力の提供です。ツールの仕様を理解し、どのように使うべきかを判断する「理解」と、判断結果やデータの内容を踏まえて次の行動や応答を組み立てる「生成」の両方を担います。LLMを中心としたレイヤーです。

オーケストレーション層・ツール層の双方に言語処理能力を提供しており、人間でいう左脳にあたります。タスクによって適切なモデルを使い分けることが必要な、試行錯誤の余地が大きいレイヤーです。

メモリ層 ― 情報の保持と参照を担う

メモリ層の役割は、エージェントが判断や行動を行う際の材料となる情報を保持し、必要なタイミングで参照できるようにすることです。保持する情報は大きく3種類に分けられます。

  1. 行動の履歴
    • エージェントがこれまでどのようなタスクを実行し、どう判断したか、ユーザーからどのようなフィードバックを受けたかが含まれます。
  2. 内部情報
    • 社内システムや社内Wikiなどに蓄積された過去の書類や案件情報など、組織内に閉じた情報が該当します。
  3. 外部情報
    • 外部のデータベースやWeb記事、書籍など、組織の外で公開されている情報が該当します。

これらの情報は、オーケストレーション層が次の行動を判断する際や、ツール層が実行内容を組み立てる際の材料として参照されます。人間でいう海馬にあたります。

  • *4 フロントエンド:Webサイトやアプリでユーザーが直接目にして操作する「表側」の領域のこと。JavaScript, TypeScript, Next.jsなどで構成される。
  • *5 Application Programming Interface(API):異なるソフトウェアやシステム同士が情報をやり取りするための接続規格。あらかじめ定義された形式に沿ってデータを送受信する。
  • *6 Model Context Protocol(MCP):AIモデルが外部のツールやデータソースと接続するための標準規格。AIがツールの仕様を読み取り、利用方法を判断できるよう設計されている。

社内事例・規則調査エージェントによる層ごとの動作例

ここまで各層の役割を個別に説明してきましたが、実際の業務では5層が連動して動きます。「ユーザーの質問に対して社内事例・規則を調査し、回答するエージェント」を例に、層がどう連携するかを見てみましょう。

例として次のようなシナリオを考えます。

  • AI活用を進めるA.inc社のA.Iさんは、設備部門の入社1年目です。設備Aを導入する稟議を通すため、過去の類似案件を参考にしたいと考えています。そこで、社内事例・規則調査エージェント「Komon」に調査を依頼しました。

処理の流れ

A.Iさんは、設備Aの導入を目的とした稟議書のフォーマットや内容、過去の類似事例、良い稟議書の特徴を教えてほしいという指示をKomonのチャット画面に入力しました。すると以下のように内部では処理されています。処理の流れを図に示しています。

図4 各層で実行されている処理のアクティビティ図

  1. 【UI層】A.Iさんが以下の指示文をチャットに入力し、A.Iさんの指示文をKomonが受け取ります。
    • 「設備Aの導入について稟議書を作成したいのですが、過去に似たような設備で稟議が通った事例があれば参考にしたいです。」
  2. 【メモリ層】
    「新しい質問が来たこと」と「指示の内容」が記録され、オーケストレーション層に処理が引き継がれます。
  3. 【オーケストレーション層】
    受け取った指示の内容から、「稟議書」「設備A」「過去事例」といった要点を整理し、何を調べるべきかのスコープを特定します。
  4. 【モデル層】
    整理された要点をもとに、指示の背景にある意図やゴールを解釈し、オーケストレーション層に返します。
    • 「稟議を通すために参考事例を探している」という目的を解釈
  5. 【オーケストレーション層】
    解釈された意図をもとに、「社内規則の確認→類似事例の検索→稟議書フォーマットの抽出→特徴の整理」という実行計画を立てます。
  6. 【ツール層】
    立てられた計画に沿って、社内文書サーバーから設備Aおよび類似設備に関する過去の稟議書を検索し、必要な規則文書を取得します。
  7. 【オーケストレーション層】
    ツール層が取得した情報をもとに、何をどの順序で回答に盛り込むか、回答の構成を決定します。
    • 「該当事例の一覧提示→承認日・導入目的の要約→稟議書フォーマットへの当てはめ」という構成に決定
  8. 【モデル層】
    決定された構成にもとづき、取得した情報を人間が読みやすい文章として生成・整形します。
  9. 【メモリ層】
    生成された回答・A.Iさんの所属部門・今回の調査内容などの背景情報がメモリ層に蓄積されます。
  10. 【UI層】
    Komonの回答文をユーザーに表示
    • 過去2年以内に承認された類似設備の稟議事例が3件見つかりました。設備名、承認日、稟議書に記載されていた導入目的や効果のポイントをまとめましたので、稟議書フォーマットにあわせてご確認ください。

このように5層が連動して「設備Aに関する良い稟議書の特徴を抽出する」という目的を達成します。

自社業務での活用へ:次に考えるべきこと

ここまで、AIエージェントの定義、従来のツールとの違い、AIエージェントの、5層構造による動作原理、を見てきました。AIエージェントが「制御可能な仕組みで動く実行役」であることはご理解いただけたかと思います。

しかし、概念や仕組みを理解しただけでは、自社にとっての意味は見えてきません。次に気になるのは「自社の業界・業務で、AIエージェントは具体的にどう活躍するのか」という点ではないでしょうか。

次回は、業種別にAIエージェントのユースケースを概観し、自社の業務とAIエージェントの接点を具体的にイメージできる形で整理します。

参考文献

Athenaにご興味を持ってくださった方へ