金融業界の生成AI活用事例10選。競争力低下を防ぐ導入ポイントと課題も解説

銀行・保険・証券などの金融機関でも、生成AIの活用を検討する企業が増えています。
融資の審査や保険金の査定など、金融機関に特有な業務を効率化したいというニーズがある一方で、「顧客情報が外部に漏れないか」「業界のルールに対応できるか」といった不安から、導入に踏み切れずにいる企業も少なくありません。
金融業界で生成AIを活用するには、業務の効率化だけでなく、セキュリティや業界特有なルールを踏まえた導入設計が欠かせません。
本記事では、
- 金融業界における生成AIの10社の活用事例
- 導入が必要な理由
- 導入を進めるうえで知っておくべき課題と対策
などを詳しく解説します。金融業界で生成AIの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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金融業界における生成AIとは?
金融業界における生成AI活用とは、生成AIにより金融業務を効率化したり、サービス開発に役立てる取り組みのことです。
たとえば、
- 生成AIが財務データを整理・分析し、融資審査を高度化・自動化する
- コールセンターで、生成AIが回答案を出し対応の質をそろえる
- 報告書を生成AIが整理・要約し、担当者が内容を確認しやすくする
のような使い方があります。
金融業務は扱うデータが多く守るべきルールも複雑であるため、生成AIを活用することで担当者の負担を減らしながら、品質にばらつきが出にくくなります。
特に、生成AIは文章の作成や要約、情報の整理が得意であるため、書類確認や問い合わせ対応など、金融業務のさまざまな場面で活用しやすくなっています。
金融業界における生成AI活用の現状
金融業界では、生成AIへの関心が高くなっており実際の業務での活用も少しずつ広がっています。
日本銀行の金融システムレポートによると、生成AIを「利用中」と回答した金融機関は31.0%、「試行中」は27.1%であり、半数以上の金融機関がすでに生成AIを使っている、または試している状況です。

出典:日本銀行「金融機関における生成AIの 利用状況とリスク管理」をもとに弊社作成
現在は初めからお客様向けのサービスに使うというよりは
- 社内文書や報告書の作成を助ける
- 問い合わせ対応の回答案を作る
- 契約書や規程、資料の内容を要約する
のように、社内業務での活用から始めるケースが多いです。
一方で、金融業務ではお客様情報の管理や、社内ルールの対応がとても重要であり、生成AIを使う際には、生成AIの回答が正しいかや人が確認する仕組みも欠かせません。
そのため、まずは使いやすい業務から始め、効果や安全性を確認しながら段階的に活用を進めています。
金融業界ではなぜ生成AIの導入が必要なのか?
金融業界で生成AIの導入が進む背景には、人手不足やお客様ニーズの変化、他社との差別化などがあります。
ここでは、金融業界が生成AIを活用する主な理由として、次の3つを解説します。
- 限られた人員で生産性を維持・向上させる必要があるため
- 顧客接点の高度化と金融サービスの個別最適化が求められているため
- 導入しないリスクが競争力低下につながり得るため
限られた人員で生産性を維持・向上させる必要があるため
金融業界には、稟議書や報告書、社内ルールの確認、問い合わせ対応など、文章を多く扱う仕事や、同じ流れで進める仕事が多くあります。
人手不足が進む中でこれまで多くの担当者が時間をかけて対応していた仕事も、今後は同じまたは少ない人数で対応しなければなりません。
そこで、
- 稟議書の下書きを生成AIが作り、担当者は確認や修正に集中する
- 問い合わせに対して生成AIが回答案を出し、対応時間を短くする
- 社内ルールや手続きについて生成AIが必要な情報を探し、調べる手間を減らす
のように生成AIを活用する必要があります。
ただし、金融業務では生成AIの間違いが大きな問題につながることもあります。
たとえば、融資の判断を誤ったりお客様に間違った情報を伝えたりすると、信頼を失ってしまうため、生成AIにすべてを任せるのではなく最後は人が確認することが大切です。
顧客接点の高度化と金融サービスの個別最適化が求められているため
金融業界では、すべてのお客様に同じ商品を案内するのではなく、一人ひとりの状況に合った対応を行うことが重要になっています。
背景には、顧客のニーズや好みが多様化していることがあり、取引履歴などの顧客データを分析し、それぞれの顧客に適した金融商品やサービスの提案につなげることが求められています。
そのため、
- 過去の取引データをもとに、生成AIが資産運用の提案を行う
- やり取りの履歴から、生成AIが次にどのような対応をすべきか担当者に示す
- 顧客の質問に対して、生成AIが話の流れに合った分かりやすい回答案を作る
のように、顧客に合ったサービスを提供するために生成AIを活用していく必要があります。
導入しないリスクが競争力低下につながり得るため
生成AIは、ただ新しい技術として注目されているだけでなく、競争力を保つために重要な技術になりつつあります。
生成AIは、これまでのAIのように自社で大量の学習データを用意するなど、一から仕組みを作る必要が少ないため、専門人材が限られている金融機関でも比較的取り入れやすい技術です。
- 書類作成
- システム開発
などさまざまな業務に活用することで、人手が足りない中でも作業の負担を減らし、より効率よく仕事を進められるようになることが期待されています。
そのため、生成AIの活用が進んでいる金融機関と、活用が進んでいない金融機関との間では、仕事の進め方やサービスの提供方法に差が出てくる可能性があります。
競争力を高めていくためには、生成AIをどの業務に使うかだけでなくこれからの事業の進め方をどう変えていくかも考えていくことが大切です。
金融業界における生成AIのユースケース
生成AIはこれまで人が時間をかけて行っていた文書作成や情報整理、お客様対応などの業務を支援し、業務の効率化やサービス品質の向上へつなげていくことができます。
ここでは、金融業界で代表的な7つの生成AIのユースケースについて解説します。
- ドラフト作成
- 文書の要約・翻訳
- データ処理の自動化
- 与信審査・信用リスク管理・引受審査
- 資産運用高度化
- コールセンター業務支援
- 営業活動の高度化
ドラフト作成
金融業務では、融資に使う稟議書、社内向けの報告書、顧客との契約書などさまざまな書類を作成する必要があります。
これらの書類は、内容の正確さや分かりやすさが求められるため、作成に時間がかかりやすい業務です。
生成AIを活用すると、担当者が初めから文章を書くのではなく生成AIに下書きを作らせることができます。
たとえば、
- 決算書や取引情報をもとに融資稟議書の下書きを作る
- 社内ルールや過去の報告書を参考に今回の案件に合った報告書の下書きを作る
- 契約書のひな形に顧客ごとの条件を入れた文書を作る
のような生成AIの使い方があり、担当者が作成する手間を減らし内容の確認や修正に時間を使えるようになります。
ただし、生成AIが作った文書は正しいものであるとは限らないため、最終的には担当者が内容を確認し、必要に応じて修正することが大切です。
文書の要約・翻訳
金融機関では、法令改正のお知らせ、金融当局の資料、取引先の決算資料、海外の市場レポートなど毎日多くの文書を確認する必要があります。
文書の種類も量も多いため、すべてを細かく読むには多くの時間がかかります。
生成AIを活用すると、
- 法令改正のお知らせを要約し自社に関係する内容を整理する
- 取引先の決算書から財務状況のポイントや注意点をまとめる
- 英語や中国語の市場レポートを日本語に翻訳し内容を分かりやすく要約する
のように、長い文書の大事なポイントを短時間で把握しやすくなります。
担当者は情報を集めたり読み込んだりする時間を減らすことができ、その分内容を判断したり顧客への対応を考えたりする時間を増やすことができます。
また、翻訳については、海外の金融機関とのやり取りや外国語の契約書・資料を確認する場面でも役立ちます。
データ処理の自動化
金融業務では、決算書の数値入力、口座情報の転記、複数のシステムにあるデータの確認など、正確さが必要かつ手作業で行うデータ処理が多くあります。
生成AIを活用すると、決まった流れで行うデータ処理を効率化しやすくなり
- 紙や画像の書類から必要な数字や文字を読み取り、システムに入力する
- 複数のデータを比べて、内容にずれがないか確認する
- レポート作成に必要なデータを集め、決まった形に整理する
など、手入力によるミスや見落としを減らすことができます。
また、担当者はデータ入力や確認にかけていた時間を減らし、分析や判断などより重要な業務に時間を使えるようになります。
与信審査・信用リスク管理・引受審査
融資審査や保険の引受審査では、顧客の財務状況や取引履歴、信用情報をもとに、リスクを正しく見極めることが求められます。
これまでは、経験のある担当者が時間をかけて確認していた作業も多くありましたが、生成AIを活用すると、その一部を効率化できます。
たとえば、
- 決算書や試算表を読み取り、財務面で注意すべき点を整理する
- 過去の審査結果や返済状況を参考にし、似た案件との違いを分かりやすくまとめる
- 保険の申込書類や過去の支払いデータを確認し、リスク判断に役立つ情報を整理する
のような使い方があり、担当者は必要な情報をすばやく確認しやすくなります。
審査にかかる時間を短くしながら見落としを減らすことにもつながり、判断の根拠を整理しやすくなるため社内での確認や説明もしやすくなります。
資産運用高度化
資産運用の現場では、市場の動きやニュースを素早く確認し、適切に判断することが大切ですが、毎日多くの市場データやニュースが出てくるため、人の目ですべてを確認し続けるのは難しくなっています。
そこで、生成AIを活用すると
- 多くのニュースや決算情報を生成AIが要約し、投資判断に必要な情報を整理する
- 市場データをもとに、投資レポートや運用報告書の下書きを作る
- お客様の資産状況をもとに、資産の見直し案を整理して担当者に示す
など、情報を集めるところから内容の整理、レポート作成までを効率化できます。
生成AIは、大量の情報を短時間で整理することが得意であるため、担当者は重要な変化に気づきやすくなり、より深い分析や顧客の提案に時間を使えるようになります。
コールセンター業務支援
コールセンターは、金融機関と顧客をつなぐ大切な窓口である一方で、担当者によって対応に差が出たり、問い合わせ対応に時間がかかることが課題になっています。
生成AIを活用すると、お客様から質問を受けたときに、生成AIがすぐに回答案を出して担当者をサポートでき
- 過去の問い合わせ内容やFAQ、社内マニュアルをもとに、回答案を出す
- 問い合わせ内容をその場で要約し、対応後の記録作成を支援する
- よくある質問への一次対応を生成AIチャットボットが行い、担当者は難しい相談に集中する
というように、経験が浅い担当者でも対応しやすくなります。
また、対応の質をそろえやすくなり、顧客の満足度を高めることへもつながります。
営業活動の高度化
金融機関の営業担当者は、顧客への提案準備や商談後のフォローなど、多くの事務作業を行い、本来は顧客と向き合うべき時間が、資料作成や記録整理に取られてしまうことがあります。
生成AIを活用すると、こうした作業を効率化し、
- お客様の取引履歴や保有資産をもとに、提案内容や商品の組み合わせを整理する
- 商談内容を要約し、議事録やフォローメールの下書きを作る
- お客様の状況に合わせた提案資料の構成を作る
などにより、営業担当者は資料作成や記録整理にかかる時間を減らせます。
その分、お客様一人ひとりに合った提案や、丁寧なフォローに時間を使えるようになります。
金融業界の生成AI導入事例
次に、国内外の金融機関が、実際に生成AIを仕事で活用した事例を10社紹介します。
それぞれの会社が抱えていた課題、どのように取り組んだのか、そしてどのような成果が出たのかを、わかりやすく説明します。
- 常陽銀行
- SMBCグループ
- 宮崎銀行
- みずほフィナンシャルグループ
- Morgan Stanley
- Mastercard
- 損保ジャパン
- 沖縄海邦銀行
- 七十七銀行
- 横浜銀行
常陽銀行
| 課題 | セキュリティがとても厳しく、生成AIを使いにくかった |
|---|---|
| 解決策 | インターネットから切り離した安全なクラウド環境に生成AIを構築 |
| 効果 | 翻訳や個人情報を自動で隠す機能はすでに利用開始 稟議書の確認や業務文書の自動作成は、精度を高めるために検証を継続中 |
常陽銀行では、金融機関ならではの厳しいセキュリティ基準があり、外部のクラウドサービスに大切な情報を送ることへの不安があり生成AIの活用が進みにくい状況でした。
そこで、Athena Technologiesと協力し、インターネットから切り離した閉域クラウド環境に、ローカルLLMを用いた専門業務特化型エージェント「JOYO AI AGENT」を構築しました。

このシステムは、
- 安全性:外部と切り離されたネットワーク上で生成AIを使うため、大切な情報を外に出さずに扱える
- 拡張性:共通の仕組みを使っているため、新しい機能を追加しやすい
- 使いやすさ:生成AIに詳しくない人でも使いやすい画面になっており、ファイルをアップロードするだけで処理できる
といった3つの特徴があり、翻訳機能と個人情報を自動で隠すマスキング機能はすでに本番利用が始まっています。
また、行内マニュアルをもとに稟議書を確認する機能や資料から必要な情報を取り出して文書の下書きを自動で作る機能については、精度を高めるための検証が続けられています。
常陽銀行の詳しい取り組み内容や開発の流れについては、以下の事例ページでも紹介していますので、ぜひ確認してみてください。
SMBCグループ
| 課題 | グループ全体で生成AIを使える環境を整え、さまざまな業務に広げたい |
|---|---|
| 解決策 | 全職員が利用できる社内AI環境「SMBC-GAI」を構築し、提案書作成、情報検索、コールセンター対応などに活用 |
| 効果 | 社内情報の検索や要約、提案書作成、問い合わせ対応、財務情報の分析などを効率化し、業務の質を高めることにつながっている |
SMBCグループでは、生成AIを一部の業務だけでなく、グループ全体の業務効率化や高度化につなげる取り組みを進めています。
その中心となっているのが、全職員が利用できる生成AI「SMBC-GAI」であり、2023年7月に構築され、安全に社内で生成AIを利用できる環境として順次機能が追加されています。

出典:SMBCグループ
作成や情報整理といった一部の作業だけでなく、業務の流れ全体をAIエージェントが支援する取り組みも始まっており、主に次のようなものがあります。
- 提案書作成の自動化・高度化 法人取引における提案内容のアイデア出しから、提案書の作成までをAIエージェントが支援。
- 融資関連規程の検索効率化 融資に関する規程を生成AIで探しやすくし、融資業務をスムーズに進めるための支援に活用。
- 規制関連情報の収集・要約 生成AIとRPAを組み合わせ、規制に関する情報の収集や要約を自動化。
また、生成AIを効果的に活用するためには、社内のさまざまなデータを生成AIが利用しやすい形に整えることも重要な課題とされています。
関係部署が連携しながら、AI活用に関するルールの見直しやリスク審査プロセスの整備、社員向けの教育コンテンツの整備も進めています。
宮崎銀行
| 課題 | 融資稟議書を手作業で作成しており、多くの時間がかかっていた |
|---|---|
| 解決策 | IBMと協力し、Azure OpenAI Serviceを使った融資稟議書作成システムを開発 |
| 効果 | 稟議書の作成にかかる作業時間を95%削減 |
宮崎銀行では、融資業務で使う稟議書を行員が手作業で一から作成しており、多くの時間と手間がかかっていたことが大きな課題でした。
そこで、日本IBMと協力し生成AIを活用した融資稟議書作成アプリケーションを開発しました。

出典:宮崎銀行
このシステムでは、
- 決算書や取引データなどを生成AIが自動で読み取る
- 読み取った情報をもとに稟議書の下書きを自動で作成する
といったことができ、行員は一から稟議書を作成する必要がなくなり、内容の確認や修正に集中できるようになります。
2024年4月から一部の店舗で本番利用が始まり、稟議書作成にかかる作業時間を95%削減できたという成果が出ています。
今後は、全店舗での利用開始に向けてシステムの精度を高めたり他の業務システムとの連携を広げたりしていく予定です。
みずほフィナンシャルグループ
| 課題 | 3万ページの事務手続書への問い合わせ対応と、与信稟議書の作成に多くの時間がかかっていた |
|---|---|
| 解決策 | 全社員向けの生成AIチャット「Wiz Chat」を導入し、その後、問い合わせ対応や稟議書作成に特化した機能を順番に開発・展開 |
| 効果 | 事務手続きに関する問い合わせ対応の効率化や与信稟議書の作成時間を、平均1〜2時間から約10分に短縮する仕組みを検証中 |
みずほフィナンシャルグループは、2023年2月下旬から生成AIの導入を検討し始め、同年6月には、国内の全社員が使える社内向けの文章生成AI「Wiz Chat」を導入しました。
生成AIの活用を段階的に広げる計画を立てており、現在はその一環として「Wiz Chat」に続く生成AIアプリである「Wizシリーズ」の開発を進めています。

特に力を入れているのは、次の2つの業務です。
- 事務手続きに関する問い合わせ対応(Wiz Search) 3万ページの事務手続書や、分散しているマニュアル・FAQをもとに、生成AIが社員からの質問に自然に回答できるかを検証。
- 与信稟議書の作成(Wiz Create) 面談記録や財務諸表を取り込むだけで、生成AIが与信稟議書の下書きを自動作成する仕組みを開発。作成時間を平均1〜2時間から約10分へ短縮することを目指す。
さらに、社員から出たアイデアをもとに、生成AIによる投資能力判断や、企業ごとのニーズに合わせた生成AIによる提案書作成などの取り組みも進められています。
生成AIが文章の下書きや情報の整理を行い、最後は社員が確認して仕上げることで、内容の正確さを保ちながら、仕事をより早く進められるようにしています。
Morgan Stanley
| 課題 | 商談後の議事録作成やフォローアップ作業に時間がかかり、顧客対応に使える時間が少なくなっていた |
|---|---|
| 解決策 | OpenAIの技術を使った、会議内容の要約やフォローアップを自動で作成するツール「AI @ Morgan Stanley Debrief」を導入 |
| 効果 | 商談後の事務作業を大きく減らし、アドバイザーが顧客との会話や提案に集中しやすい環境を実現 |
Morgan Stanleyは、資産管理や資産運用のアドバイスを行う部門で、商談後の作業負担が大きいことが課題でした。
具体的には、顧客との面談で話した内容を議事録にまとめたり、フォローアップメールを作成したり、次に対応すべきことを整理したりする作業に多くの時間がかかっていました。
そこで、2024年6月にOpenAIの技術を活用した生成AIツール「AI @ Morgan Stanley Debrief」を導入し
- 面談で話した重要な内容を自動で要約
- アドバイザーが確認して送信できる形でフォローアップメールの下書きを作成
- 次に対応すべきことを整理し、リスト化
- Salesforceに自動で保存
のように、面談中の内容を記録したうえで、その後の作業を生成AIがサポートすることで商談後の事務作業の負担軽減につながっています。
「1回の面談につき約30分を節約できている」といった現場の声もあり、アドバイザーは顧客との会話により集中しやすくなっています。
また、Morgan Stanleyはこれまでにも、2023年9月に過去データをすばやく調べられる生成AIチャットボットである「AI @ Morgan Stanley Assistant」を導入しており、現在ではアドバイザーチームの98%が利用するほど広く使われています。
Mastercard
| 課題 | 不正利用されたカード情報をすばやく見つけ、被害をできるだけ小さくしたい |
|---|---|
| 解決策 | 生成AIを使った、不正カードを見つける技術を開発・導入 |
| 効果 | 不正カードを見つける精度が従来の2倍に向上。 不正ではない取引を誤って止めてしまうケースも大きく削減 |
Mastercardは、クレジットカードの不正利用をより正確により早く見つけるために生成AIを活用しています。
カード情報は、スパイウェアやマルウェア、カードスキミングなどによって盗まれることがあり、盗まれたカード情報の一部が違法サイトに掲載されるケースもあります。
Mastercardは、こうした不正に使われる可能性のあるカード情報を生成AIを活用し以前よりもかなり早く見つけられるようにしました。
生成AIを用いて大量の加盟店の取引データを確認し、不正利用につながりそうな複雑なパターンを見つける仕組みであり
- 不正に使われた可能性のあるカードの検知率が従来の2倍に向上
- 不正取引検知の過程での誤検知を最大200%削減
- 不正リスクのある加盟店を見つけるスピードが300%向上
といった成果が出ています。
不正利用の可能性があるカードを、より早く正確に銀行へ知らせることができ、カードの停止や再発行をすばやく行えるようになっています。
また、誤検知が減ることで正しくカードを使っている利用者が不要な確認や手続きに巻き込まれるリスクも減らすことも期待できます。
参考:Mastercard
損保ジャパン
| 課題 | 年間67万件にのぼる社内からの問い合わせ対応を、もっと効率よく行うこと |
|---|---|
| 解決策 | 社内マニュアルと生成AIを組み合わせた、問い合わせ回答を支援するシステム「おしそんLLM」を開発 |
| 効果 | 生成AIで対応できる問い合わせでは、業務時間を約4割削減 |
損保ジャパンでは、社内の情報検索システムに、年間67万件もの問い合わせが集まっており、問い合わせに回答する担当者の負担を減らすことが大きな課題になっていました。
そこで、2025年6月にLLMを搭載した照会回答支援システムである「おしそんLLM」を全国の営業店や本社へリリースしました。
「おしそんLLM」は、損保ジャパンが持つ多くのマニュアルやQ&Aデータをもとに、問い合わせ内容に合った回答案を生成AIが自動で作る仕組みです。

回答担当者は、生成AIが作成した回答案と参考資料を確認しながら、最終的な回答を作成することができ、生成AIで対応できる問い合わせでは、業務時間を約4割削減できています。
また、生成AIが間違った情報を正しい情報のように出してしまうリスクへの対策も行っており、安全に使えるように配慮された設計になっています。
沖縄海邦銀行
| 課題 | 生成AIが実際にどこまで使えるのかを試し、地域の中小企業にも広げていくことが目標 |
|---|---|
| 解決策 | 映像・BGM・ナレーションを生成AIで作成した企業CMを公開 |
| 効果 | 金融機関として国内初の生成AIによるCMを実現 |
沖縄海邦銀行の取り組みは、生成AIが実際にどのくらい使えるのかを自分たちで試し、その経験を地域の中小企業にも広げていくための取り組みをしています。
具体的には「KAIHO PROJECT」として、生成AIを活用して3本の企業CMを制作しました。

出典:沖縄海邦銀行
制作されたCMは、
- 近未来編「沖縄の未来」
- SDGs編「海と緑と共に」
- 多様性編「カイホーしてる?」
の3本であり、映像・BGM・ナレーションの多くに、複数の生成AIソフトを使用しています。
このCMは、金融機関による国内初の生成AIによるCMとして注目され、2023年11月14日に公開されました。
沖縄海邦銀行は、この取り組みを通じて、生成AIの活用が現実的なものであることを確認でき、自社で実際に活用することで生成AIの得意なことや人の工夫が必要な部分を理解するきっかけにもなっています。
また、この経験は今後の取引先支援にもつながるものであり取引先の中小企業や県内事業者に対して生成AI活用やDXによる生産性向上、業務効率化などを支援していくとのことです。
七十七銀行
| 課題 | 文書作成や情報確認など、さまざまな業務にかかる作業時間を減らすこと |
|---|---|
| 解決策 | Microsoft Azureを基盤に、NTT東日本と協力しながら、2025年3月から生成AIの全行導入を段階的に開始 |
| 効果 | 本部の55以上の業務で、年間約3.2万時間の業務効率化を見込む |
七十七銀行は、銀行の仕事をより効率よく進めるため、生成AIの活用に取り組んでいます。
2025年3月から生成AIの活用を始めており、文書作成や情報集め、データの整理・分析など、日々の業務で時間がかかりやすい作業を中心に次の3つの段階で広げていく方針です。
- Phase 1:生成AIの基本機能+データ分析 文書作成や情報集め、データの整理・分析など、基本的な業務に生成AIを活用。
- Phase 2:行内外の情報との連携 銀行内の情報や外部の情報と生成AIをつなげ、仕事に合った回答や資料作成へ。
- Phase 3:AIエージェントとしての活用 生成AIが目的に合わせて必要な手順を考え、複数の作業を支援。

出典:七十七銀行
一般的な情報だけでなく、銀行内の情報も使えるようにすることで本部の55以上の業務で活用が見込まれており年間約3.2万時間の作業時間の削減が期待されています。
特に、生成AIによってくり返し行う作業や時間のかかる確認作業を減らすことが目的であり、その分、行員がより大切な仕事に時間を使えるようにし新しい価値づくりにつなげていく取り組みです。
横浜銀行
| 課題 | システム開発プロセスの効率化 |
|---|---|
| 解決策 | Trust株式会社の生成AIソリューション「Trust TLanP®」を使った実証実験を開始 |
| 効果 | 自社で開発しているプログラムの設計書作成を効率化できるか検証中。地域金融機関として初の取り組み |
横浜銀行は、「AIを使った業務効率化」を重要なテーマにしており、その一環として2025年9月にTrust株式会社と協力し、生成AIを使ってシステム開発を効率化する実証実験を始めると発表しました。
活用するのはTrust社が開発した「Trust TLanP®(Traditional Language Processor)」であり、これは既存のソースコードを読み取り、設計書やテストデータ、テストケースを自動で作成できる、金融機関向けの生成AIソリューションです。

出典:横浜銀行
今回の実証実験では、横浜銀行が自社で開発しているプログラムに対して、「Trust TLanP®」を使い、設計書を作る作業をどれくらい効率化できるかを検証するものです。
- 開発コストの削減
- 開発期間の短縮
- システム開発の進め方そのものの改善
などを目指しており、今後は自社開発のプログラムだけでなく外部に委託している業務システムにも活用できるかを検討していく方針です。
金融業界の生成AI導入における課題
生成AIの具体的なユースケースや企業の導入事例を見てきましたが、ここでは金融機関が生成AIを導入する際に気をつけたい主な課題を3つ解説します。
- 説明可能性・妥当性を担保しにくい
- ガバナンス不備が実務リスクに直結する
- 個人情報保護と情報セキュリティの統制が難しい
説明可能性・妥当性を担保しにくい
金融業務では、社内からの問い合わせ対応、融資判断のサポートなどで生成AIが活用されていますが、その答えがどの情報をもとに作られたのかが分かりにくい場合があります。
また、文章としては正しく見えても、内容に誤りが含まれている可能性もあります。
特に金融機関では、生成AIの回答について
- 社内ルールや法律に合っているか
- 上司や監査担当者に説明できる内容か
- 顧客に責任を持って案内できる内容か
のような点を確認する必要があり、これらを確認できないまま使ってしまうと、社内承認やお客様対応、監査対応などで問題につながるおそれがあります。
そのため、生成AIが出した内容をそのまま使うのではなく、担当者が根拠や内容を確認し、必要に応じて修正する仕組みが大切です。
ガバナンス不備が実務リスクに直結する
生成AIを一部の担当者が試している段階では担当者ごとにある程度は管理できますが、全社員が日常的に使うようになると現場のみの管理だけでは十分ではありません。
たとえば、
- 誰が、何のために、どのように生成AIを使っているか会社が把握できていない
- 生成AIの回答が正しいか確認するルールがない
- 問題が起きたとき、誰が責任を持つのか決まっていない
- 使い方が広がっているのに、社内ルールや教育が追いついていない
のような状態には注意が必要であり、このような状態が続くとミスや情報漏えいが起きたときに原因を見つけにくくなります。
対応が遅れたり、社内外への説明が難しくなったりするリスクもあるため生成AIを安全に使うには、「利用ルールを決める」、「生成AIの回答を確認する体制を作る」、「責任の所在を明確にする」などが大切です。
あわせて、社員が正しく使えるように継続的に教育を行う必要があります。
金融機関に求められる生成AI活用のルールや体制づくりについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考:AIガバナンスとは? 必要性や生成AI活用を進めるポイントも解説
個人情報保護と情報セキュリティの統制が難しい
金融機関は、顧客の個人情報や取引情報、信用情報など外に漏れると大きな問題につながる情報を日常的に扱っています。
そのため、生成AIを業務で使う際には入力した情報がどのように使われるのかをきちんと管理する必要があります。
たとえば、
- 担当者が大切な情報を誤って生成AIに入力しないようにする
- 入力した情報が、外部サービスの学習に使われないようにする
- 生成AIが作った内容が、外部に漏れないようにする
- 社内だけで使える安全な環境で生成AIを動かす
などの仕組みが必要であり、一般向けの生成AIサービスをそのまま業務に使わず、社内専用の生成AI環境を用意する金融機関も多いです。
生成AIは使いやすさだけを優先すると、情報漏えいなどのリスクが大きくなるため、導入時からセキュリティや情報管理の仕組みを整えておくことが大切です。
生成AIのセキュリティリスクと対策については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ確認してみてください。
参考:生成AIのセキュリティリスクと対策まとめ。安全に活用するポイントまで解説
金融機関の生成AI活用を支えるAthena Platform
金融業界では、国内外の金融機関が生成AIを実際の業務に取り入れ、稟議書の作成、問い合わせ対応、不正の発見など、さまざまな場面で成果を出し始めています。
一方で、活用が広がるほど
- 生成AIの判断理由をどう説明するか
- 利用ルールをどう管理するか
- 大切なデータをどう守るか
といった課題も大きくなっています。
こうした課題に自社だけで対応しようとすると、セキュリティ環境の整備、利用ルールや管理体制づくり、システムを安定して動かし続けるための運用など、幅広い分野で高い専門性が必要になります。
金融業界ならではの規制への対応もあるため、現場だけで対応し続けるのは簡単ではありません。
Athena Platformは、こうした要件をひとつの基盤にまとめて構築することで、金融機関が安心して生成AIを活用できる環境を提供します。
セキュリティ:大切なデータを外に出さず、閉じた環境で運用
Athena Platformはオンプレミスや閉域網クラウドなど、外部から切り離されたプライベートなネットワーク上で生成AIを活用できます。

顧客情報や取引データを外部に送ることなく、日々の業務に生成AIを組み込めるため、情報漏えいのリスクを大きく抑えられます。
可用性:トラブル時も自動で切り替え、業務を止めにくい
複数のサーバーを同時に動かす仕組みを採用しており、トラブルが起きた場合でも別のサーバーに自動で切り替わります。

システム停止の時間をできるだけ短くし、金融業務に求められる安定した運用を支えます。
ガバナンス:入出力の制限と利用履歴の管理で、組織として安全に使える
生成AIへの入力や出力をその場でチェック・制限するガードレール機能により、個人情報の送信や不適切な回答を自動で防ぎます。

また、すべての利用履歴を確認できるため、生成AIがどのように使われたかの確認や、監査への備えにも役立ちます。
金融機関として安全性やルールを守りながら生成AIを業務で効果的に活用したい方は、ぜひAthena Platformの詳細をご確認ください。
⇨Athena Platformについて詳しくはこちら



